リハヤートのメモリーノート

リハビリテーション医が、忘備録として思いついたことをつづります

ARNI(アンギオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)

ARNI(アンギオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)は、商品名エンレストという名前で、発売されています。 これはRAAS(レニンアンギオテンシンアルドステロン系)阻害による降圧作用及びネプリライシン阻害によるナトリウム利尿ペプチド (NP)の作用が増…

なぜ絶食中の人に中心静脈をいきなり始めてはいけないのか?

絶食中の人に末梢点滴を行うと少なくとも一日に必要なカロリーを入れることは困難です。それではいきなり高カロリー輸液を入れたらよいではないかという考えになるのですが、そう簡単ではありません。その理由として再栄養症候群 (refeeding syndrome)を起こ…

銀杏(ぎんなん)

銀杏は、おめでたい席や茶わん蒸しなどでみられますが、食べ過ぎに注意です。 銀杏はいちょうの木の果実部分です。そもそもいちょうの木は中国原産で、日本、台湾あたりにしか残存していおらず、欧米では食べられていないようです。滋養強壮などの効果が知ら…

パーキンソン病とインフルエンザ

パーキンソン病の人でインフルエンザ感染後10年超における発症リスクが70%以上上昇というレポートが出たようです。(JAMA Neurol) インフルエンザ以外の複数の感染症との関連は見られなかったようです。 原因としてはパーキンソン病前駆期に、運動症状以外の…

脳梗塞の抗血小板療法について

脳梗塞予防薬として、ラクナ梗塞など小さな梗塞の場合は、抗血小板剤を1剤あるいは2剤で投与を開始します。アテローム血栓性脳梗塞やBADなどの場合は、抗血小板剤2剤で開始することが多いようです。 これらを裏付けるものとして、CHANCE trial (Clopidogrel …

結核感染の判定検査

結核菌に感染しているかどうかを判定するものとして、インターフェロンγ遊離試験 IGRA (interferon-γ release assay)と呼ばれるものがあります。 QFT(クオンティフェロン)とT-spotがあります。 QFTは、3種類の結核菌群特異抗原で血液を刺激し、産生された…

エスプーマ

フレンチなど高級店などでおしゃれに見せるためにエスプーマという方法で、液状の食材に亜酸化窒素を混ぜてムーズ状にする技法があります。 医学に関係なさそうですが、高齢者など嚥下障害をきたした方に対して、このような形状にすることで誤嚥のリスクを低…

杜仲茶

杜仲茶の元となる杜仲とは20mに達する落葉高木です。中国原産1種のみ現存しています。 芍薬、鹿茸、朝鮮人参、冬虫夏草、そして杜仲が五大漢薬とされています。 降圧、利尿、強壮、鎮痛の効果があるとされています。 これは杜仲の樹皮にあるリグナンという成…

輸液

輸液にはいろいろな種類があります。 まず基本となるものとして、生理食塩水があります。 これはヒトの体液が0.9%NaClで同じ浸透圧となることより、生理食塩水は0.9%として作られます。 またリンゲル液というものがあります。これは生理食塩水にK,Caを加えた…

男性更年期

男性にも更年期があるらしいです。 体内のテストステロンの低下で起こるとされ、LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)とも呼ばれるようです。 玉ねぎに含まれる含硫アミノ酸のメチイン、シクロアリイン、イソアリインを総称したタマネギアリイン摂取にて…

片頭痛の治療 update

片頭痛について最近の治療についてまとめます。 現在の片頭痛で急性期治療の主役としてトリプタンがあります。 トリプタンは5-HT1B/1D/1F受容体作動薬です。 5-HT1B受容体刺激は血管収縮作用があるため、心血管系合併症を有する方には使用できません。 ここ…

コロナウイルスの作用機序と免疫

今回はコロナウイルスの侵入とその防衛についてまとめてみます。 コロナウイルスが感染するヒトの細胞は、膜表面にACE2 (angiotensin-converting enzyme 2)を有しています。 ACE2はⅡ型肺胞上皮、血管内皮、口腔粘膜、肝・腎・心・腸などに分布しています。肺…

腎機能障害の高血圧管理

ここでは腎機能障害の高血圧管理についてまとめます。 高血圧の治療薬はいろいろな種類があります。 血圧の定義は以下のようになります。 血圧=心拍出量×末梢血管抵抗 (1)心拍出量を下げる ①利尿薬 ②β blocker ③減塩 (2)末梢血管抵抗を下げる ①レニン…

アーユルヴェーダ

アーユルヴェーダは、健康志向の方の間でも有名になってきましたね。 元々はインドの伝統的な医学です。 ちなみに世界三大伝統医学はアーユルヴェーダ、ユナニ医学(ギリシャ・アラビア)、中国医学だそうです。 サンスクリット語のアーユス(Ayus)が生命、…

ミトコンドリア

ミトコンドリアでNAD+といって、酸化還元反応の中心的役割を果たす補酵素があります。 NAD+は①細胞の増殖・分化②ATP産生③インスリン分泌に必要とされ、糖代謝に不可欠な酵素です。 NAD+は長寿遺伝子と言われるサーチュイン遺伝子を活性化することにより以…

サルコペニア

サルコペニアとは ギリシャ語で「サルコ」は筋肉、「ぺニア」は喪失を表し、加齢による筋肉の減少を表す言葉です。 サルコペニアの診断基準(AWFS2019)では、握力(男性26kg未満、女性18kg未満)、6M歩行で歩行速度(1.0m/s未満)、5回帽子立ち上がりテスト(…

半月板損傷

サッカーやバスケットボールなど膝に負担がかかりやすいスポーツなどで起こりやすい半月板損傷。 日本のサッカー選手では、本田選手が手術、長友選手は保存的治療を選択しました。 以前は手術することが多かったですが、最近は保存的治療を選択することが多…

膝蓋腱炎

膝蓋腱炎はジャンプを繰り返すことによって起こります。よってジャンパー膝とも呼ばれます。 繰り返しの刺激により腱内に血管の増生が見られており、保存的治療が主となります。 最近のトピックスとして次のような治療法もあります。 多血小板血漿(PRP) 血小…

片頭痛の新薬 抗CGRP抗体

片頭痛の新薬が発売されています。 トリプタン系という薬が、片頭痛の急性期の痛みに対して広く使用されるようになりしばらく経ちましたが、今回新たな作用機序の薬が使用できるようになりました。 CGRPとは CGRP(Calcitonin gene related peptide)は、アミ…

年収と食事

食事について調べていると、年収との相関が良く言われます。 以前であれば年収が高いと贅沢な食事をしがちで、高血圧、高脂血症、糖尿病などを起こしやすくなる傾向になりやすそうですが、食事に対する知識が広まるにつれ、徐々に高収入の家庭は、健康にお金…

コロナワクチンの接種率

コロナが拡がり約1年半が経ち、ワクチン接種が進んでもまだ収束がみえません。 そもそもワクチンを接種していても、コロナにはかかります。インフルエンザ予防接種をうけてもインフルエンザにかかるのと同じことです。 いったいどれぐらいワクチン接種が進め…

脂肪酸のお話

最近は糖質制限や脂肪の摂り方などが、栄養面ではトピックスになっています。 ここでは脂肪の摂り方についてまとめてみます。 飽和脂肪酸 炭素の二重結合がない 不飽和脂肪酸 炭素の二重結合がある (1) 一価不飽和脂肪酸 (n-9系) 炭素の二重結合が1つのも…

脂質代謝と薬物

脂質は出てくる用語が聞きなれない言葉が多く、混乱します。 いかに脂質の代謝、薬物についてまとめます。 脂質の役割 コレステロール:細胞膜やステロイドホルモン、胆汁酸の原料 中性脂肪:エネルギー源 リン脂質:細胞膜の成分 コレステロールや中性脂肪…

MAO-B阻害薬(まとめ)

パーキンソン病治療のMAO-B阻害薬について現在の位置づけについてまとめます。 DA agonistとMAO-B阻害薬についてはどちらがよいのか? 一般的にはDA agonistがL-DOPAに続いて2番目に使用されることが多いです。 NICEガイドラインでは、DA agonistは衝動制御…

パーキンソン病とリハビリテーション

パーキンソン病は、神経難病の一つで、人口10万人あたり100-150人程度いるとされ、高齢化社会とともに増加しています。 中脳の黒質からドパミンの産生が低下することにより様々な症状を引き起こします。ドパミンは、簡単に言えば「気持ちよい」、「心地よい…

パーキンソン病の排尿障害

パーキンソン病の排尿障害は、70%に前頭葉-ドパミン受容体D1障害によると考えられる過活動膀胱(OAB:over acting bladder)を認めます。過活動膀胱により膀胱が異常に活動してしまい頻尿になりmす。パーキンソン病といえば運動や認知、腸の動きはすべて遅く…

痙縮とは

痙縮という言葉は、拘縮とよく混同されやすいです。具体的には以下のように定義されます。 痙縮 = 伸張反射活動の亢進 拘縮 = 関節包外の軟部組織が原因で起こる関節可動域制限 たいてい脳卒中などの場合弛緩 ⇒ 痙縮 ⇒ 痙縮拘縮となります。 要は拘縮は二…

コロナワクチン

コロナワクチンのアナフィラキシーについてまとめてみます。 ファイザー社とモデルナ社の2つがmRNAワクチンと呼ばれる新しいタイプのワクチンで、現在のところ最も効果があるとされています。 ワクチンの問診にも携わることが多くなってきますが、一番気にな…

糖尿病 経口薬

糖尿病の薬について簡単にまとめてみます。 種類がたくさんあって、専門でないと使い分けが今一つすっきりしませんね。 血糖のコントロールは以下の機序です。 膵臓α細胞 グルカゴン分泌 → 血糖↑ 膵臓β細胞 インスリン分泌 → 血糖↓ 【使用される内服薬】 メ…

変形性膝関節症

整形外科領域についても、適宜まとめてみます。 変形性膝関節症(OA)は、高齢化社会に伴い増加しています。 特に高齢女性に多いとされています。 以下に専門的に学んだことを列挙します。 【痛みの機序】 OAの痛みの機序としては、次のようなものがあります。…