リハヤートのメモリーノート

リハビリテーション医が、忘備録として思いついたことをつづります

なぜ絶食中の人に中心静脈をいきなり始めてはいけないのか?

 絶食中の人に末梢点滴を行うと少なくとも一日に必要なカロリーを入れることは困難です。それではいきなり高カロリー輸液を入れたらよいではないかという考えになるのですが、そう簡単ではありません。その理由として再栄養症候群 (refeeding syndrome)を起こしうるからということがあります。

 再栄養症候群とは、極度の低栄養状態から、再栄養により栄養状態が急速に改善することによって起こります。

機序としては、まず炭水化物の摂取により、糖代謝の促進がおきます。

その際に大量のリン酸が必要となり、リン酸が細胞外から細胞内に移動し、低リン血症となります。

そのため全身のATPが不足し、赤血球2,3-DPGが減少することで、酸素運搬能力が低下し、心不全、呼吸不全など起こすと考えられます。

血清リン酸濃度を再栄養開始時から1週間ほど測定し、補正する必要があります。

 

このため絶食状態が続いたとき栄養を開始する場合、いきなり高カロリー輸液を開始することは避けて、徐々にカロリーを上げた方がよいとされます。