リハヤートのメモリーノート

リハビリテーション医が、忘備録として思いついたことをつづります

片頭痛の新薬 抗CGRP抗体

片頭痛の新薬が発売されています。

トリプタン系という薬が、片頭痛の急性期の痛みに対して広く使用されるようになりしばらく経ちましたが、今回新たな作用機序の薬が使用できるようになりました。

 

CGRPとは

 CGRP(Calcitonin gene related peptide)は、アミノ酸37個で構成されるポリペプチドで中枢神経・心臓・血管・腸管などに分布しています。

 

α-CGRP 末梢感覚神経系(三叉神経)に分布

β-CGRP 腸管神経系に分布

 

CGRPの作用機序

これらの作用機序は完全にはわかってはいませんが、近年片頭痛の病因として注目されるようになりました。

 具体的には片頭痛発作中は、頸静脈中のCGRPが上昇し、発作が治まるとCGRPが正常化することより、CGRPが脳血管に作用し片頭痛を引き起こすのではないかという仮説が立てられました。

 もともと片頭痛は三叉神経血管説というものがあり、三叉神経にセロトニンが関与して痛みを起こしているということで、治療が行われています。このセロトニンの低下により三叉神経からCGRPの放出が行われているのではないかと考えられています。

 例えば、血圧が低下した時に脳の血流を保つために血管を拡張させます。CGRPは、このような緊急時に脳血管を拡張して、脳血流を維持している働きがあると考えられています。

 

片頭痛の治療にどう活かすか

 そこで片頭痛の治療戦略として以下のような手順が考えられます。

1 セロトニン低下で、三叉神経が興奮しCGRPを放出するため、まず5HT1b/1d作動薬(トリプタン)でCGRP放出を抑制

2 放出後のCGRPを、抗CGRP抗体でブロック

 

1 トリプタン

  半減期は2~5時間

  急性期治療薬として使用

2 抗CGRP抗体

  半減期は約30日

  4週または12週に1回の皮下注射

  発症抑制薬として使用

 

頭痛予防薬は内服薬としてCa拮抗薬やβブロッカーなどあり、抗CGRP抗体の投与タイミングはまだあいまいなところはあります。

片頭痛が従来の予防薬でコントロールが不安定な方に提案してみることになりそうです。

 

現在のところ3社から発売されています。

カルカネズマブ

フレマネズマブ

エレヌマブ

立て続けに発売されているところを見ると、効果が期待できそうですね。