リハヤートのメモリーノート

リハビリテーション医が、忘備録として思いついたことをつづります

ミトコンドリア

ミトコンドリアNAD+といって、酸化還元反応の中心的役割を果たす補酵素があります。

NAD+は①細胞の増殖・分化②ATP産生③インスリン分泌に必要とされ、糖代謝に不可欠な酵素です。

 

NAD+は長寿遺伝子と言われるサーチュイン遺伝子を活性化することにより以下の効果が発揮されます。

ミトコンドリアの数が増加

②古いミトコンドリアを除去

③ROS産生低下

ミトコンドリアの品質管理向上

 

加齢によりNAD+が低下すると、サーチュイン遺伝子低下し、その結果2型糖尿病発症しやすくなります。

カロリー制限をすることによりNAD+を増やすことができるようです。

サルコペニア

サルコペニアとは

ギリシャ語で「サルコ」は筋肉、「ぺニア」は喪失を表し、加齢による筋肉の減少を表す言葉です。

 サルコペニアの診断基準(AWFS2019)では、握力(男性26kg未満、女性18kg未満)、6M歩行で歩行速度(1.0m/s未満)、5回帽子立ち上がりテスト(12S以上)

SPPS(Short Physical Performance Battery) 9点以下、骨格筋量DXA,BIAなどの項目からサルコペニアと診断されます。

 

似たようなものとしてロコモ、フレイルなどありますが、おおまかにはフレイル>ロコモ>サルコペニアとなり、それぞれに包括されます。

 

サルコペニアの予防は、ありきたりですが運動と栄養が基本です。

 運動は下半身を中心にウオーキングなどとなります。高齢者の場合レジスタンス運動として、低負荷・高反復でもよいとされます。

 栄養はタンパク質を1.0-1.5kg/日目安に3食に均一に摂取すること、ビタミンDを摂取することが挙げられます。

 

廃用とは

もう一つリハビリテーションを行う上では、廃用症候群といって、筋肉を使用しないことにより(廃用)筋力が低下するものがあります。

 一般に筋力の30%を超える負荷では筋力は増加し、筋力維持には20~30%の負荷が必要で、20%未満の負荷では維持できないとされます。

 全く筋肉を使用しないと1日1~1.5%の筋力低下をきたし、2週間で20%程度筋委縮が見られます。特に下肢の進行が速いです。

筋肉量は、筋繊維の大きさと繊維数で構成されますが、筋萎縮は筋繊維の縮小が主となります。また短縮位で固定される方が、伸長位で固定されるより著しいとされます。

 

筋萎縮のメカニズムとしてはたんぱく質分解の亢進によるもので、特にユビキチン・プロテアソーム系がメインになります。その他リソソームのカテプシン系、Ca依存性のカルパイン系、オートファジー系などもあります。

 

廃用による筋委縮はタイプⅠ繊維という遅筋が萎縮が強く、加齢による筋委縮はタイプⅡ繊維という速筋が萎縮が強いとされます。

お年をとられた方がスピードが遅くなるということでイメージは合いそうですね。

 

半月板損傷

サッカーやバスケットボールなど膝に負担がかかりやすいスポーツなどで起こりやすい半月板損傷。

日本のサッカー選手では、本田選手が手術、長友選手は保存的治療を選択しました。

以前は手術することが多かったですが、最近は保存的治療を選択することが多いようです。これは半月板を失うと関節症変化が加速するためで、半月板を温存する重要性が言われています。

 

中高年内側半月板損傷は、明らかなロッキング症状があれば手術を選択しますが、それ以外では手術しない方向のようです。

一方スポーツ選手や若年者外側半月板損傷は手術適応になりやすいですが、出来るだけ半月板を温存するようです。

 

半月板の手術には半月板縫合切除がありますが、縫合したほうが当然変形性膝関節症のリスクは低くなります。

ただし、再手術率は、縫合は切除の約5~10倍という報告があります。これは20-30%程度再断裂を認めるためです。

 

大まかにいえばスポーツの復帰時期は以下が目安になります。

半月板切除術は2-3か月

半月板縫合術は6か月

 

スポーツをガツガツしたい人以外は、保存的にした方が将来的には無難のようです。

膝蓋腱炎

膝蓋腱炎はジャンプを繰り返すことによって起こります。よってジャンパー膝とも呼ばれます。

繰り返しの刺激により腱内に血管の増生が見られており、保存的治療が主となります。

 

最近のトピックスとして次のような治療法もあります。

 

多血小板血漿(PRP)

血小板からは成長因子と呼ばれる物質が放出され、それらが組織治癒を促進します。変形性膝関節症の方に使用を考慮します。ただ、保険適応外です。

 

対外衝撃波

腱炎、靭帯炎など多くの疼痛疾患の除痛を目的とした治療に使用されます。

欧米ではスポーツ選手を中心に低侵襲で安全かつ有効な治療と認定されています。

片頭痛の新薬 抗CGRP抗体

片頭痛の新薬が発売されています。

トリプタン系という薬が、片頭痛の急性期の痛みに対して広く使用されるようになりしばらく経ちましたが、今回新たな作用機序の薬が使用できるようになりました。

 

CGRPとは

 CGRP(Calcitonin gene related peptide)は、アミノ酸37個で構成されるポリペプチドで中枢神経・心臓・血管・腸管などに分布しています。

 

α-CGRP 末梢感覚神経系(三叉神経)に分布

β-CGRP 腸管神経系に分布

 

CGRPの作用機序

これらの作用機序は完全にはわかってはいませんが、近年片頭痛の病因として注目されるようになりました。

 具体的には片頭痛発作中は、頸静脈中のCGRPが上昇し、発作が治まるとCGRPが正常化することより、CGRPが脳血管に作用し片頭痛を引き起こすのではないかという仮説が立てられました。

 もともと片頭痛は三叉神経血管説というものがあり、三叉神経にセロトニンが関与して痛みを起こしているということで、治療が行われています。このセロトニンの低下により三叉神経からCGRPの放出が行われているのではないかと考えられています。

 例えば、血圧が低下した時に脳の血流を保つために血管を拡張させます。CGRPは、このような緊急時に脳血管を拡張して、脳血流を維持している働きがあると考えられています。

 

片頭痛の治療にどう活かすか

 そこで片頭痛の治療戦略として以下のような手順が考えられます。

1 セロトニン低下で、三叉神経が興奮しCGRPを放出するため、まず5HT1b/1d作動薬(トリプタン)でCGRP放出を抑制

2 放出後のCGRPを、抗CGRP抗体でブロック

 

1 トリプタン

  半減期は2~5時間

  急性期治療薬として使用

2 抗CGRP抗体

  半減期は約30日

  4週または12週に1回の皮下注射

  発症抑制薬として使用

 

頭痛予防薬は内服薬としてCa拮抗薬やβブロッカーなどあり、抗CGRP抗体の投与タイミングはまだあいまいなところはあります。

片頭痛が従来の予防薬でコントロールが不安定な方に提案してみることになりそうです。

 

現在のところ3社から発売されています。

カルカネズマブ

フレマネズマブ

エレヌマブ

立て続けに発売されているところを見ると、効果が期待できそうですね。

 

 

年収と食事

食事について調べていると、年収との相関が良く言われます。

以前であれば年収が高いと贅沢な食事をしがちで、高血圧、高脂血症、糖尿病などを起こしやすくなる傾向になりやすそうですが、食事に対する知識が広まるにつれ、徐々に高収入の家庭は、健康にお金を使う方の方が多くなっているようです。

つまり収入と健康は比例している、そして今後ますますその差は広がっていくように思えます。

外食などでもマックなどのファーストフードのように値段が安いものは、高脂肪、高血糖になりやすいもの多いです。

アメリカ人でハンバーガーにコーラを食べている人のイメージが強いですが、低収入の人はそれ以外のものを食べたくてもお金がないためそれしか物が買えないことが多いようです。もちろんそれらを美味しく感じている人も多いでしょうが、健康に気を付けようと思うとどうしても値段が上がってしまいます。

実際食品はコメ、めん、パンなど炭水化物のみのものは値段が比較的安いですが、肉魚などトッピングを付けようとすると値段がその分跳ね上がります。

糖質、脂質が多いものは特に男性は美味しく感じやすい人が多いですが、安くて美味しいものはその分リスクがあることをわかって食べるべきです。

私も分かっていても食べてしまいますが、ある程度栄養のことを知っているとブレーキがかかり、それが健康につながります。

極端にそれらを排除すると、非常にストレスが溜まりますので、ある程度ほどほどにして楽しく食事を楽しみたいですね。

コロナワクチンの接種率

コロナが拡がり約1年半が経ち、ワクチン接種が進んでもまだ収束がみえません。

そもそもワクチンを接種していても、コロナにはかかります。インフルエンザ予防接種をうけてもインフルエンザにかかるのと同じことです。

いったいどれぐらいワクチン接種が進めば安心できるのでしょうか。

 

 

基本再生産数 (R0)というものがあり、病原体に免疫を持っている人が、免疫を持っていない人に対して、1人当たり何人感染させるかという数値で、感染の強さを表します。当初はR0は2.5程度と言われていましたが、デルタ株は6~8ともいわれており、大変感染力が強いです。

実際にコロナウイルスを1人の感染者から何人に感染させるかを示す数値があり、実効再生産数 Effective reproduction number (Rt)とよばれます。これは、マスクやワクチンなど予防をしていても実際にどれぐらい1人当たり感染者数が拡がるかを示すものです。これが1を上回れば感染は拡大していき、下回れば感染は収束していくものとされます。

 

この度の第5波は、医療現場にいても一番感染力が強い印象です。

ワクチンの普及率の指標としては、かなりざっくり安心して生活するということを考慮して基本再生産数で考えると、1人当たり重症化しないようにするには、最大8として、1人が8人に感染させるウイルスだとしてもそのうち1人かそれ以下に感染を抑えられるようになれば、少なくとも重症者数は減ってくるはずです。

そうすると7/8×100=87.5%の人がワクチンを打っていれば、安心して生活が出来るようになるかもしれません。実際は6,7人とすればもう少し下がってもよいということになります。

当初は1人当たり3人としても、2/3×100=67%なので70%程度が目安と思われましたが、安心するには80%程度の普及率が求められそうですね。

日本は、いろいろマスコミに叩かれていますが、8月20日時点で40%程度まで来ているので、世界的にもかなり盛り返しています。このペースでいけば9~10月には80%も達成可能にも見えますが、問題は12歳未満のお子さんがうてないことや、それ以外でもワクチンを打たない方がいることからどこかで伸び悩みそうです。

なんとかお子さんも打てるようになるとよいですね。