リハヤートのメモリーノート

リハビリテーション医が、忘備録として思いついたことをつづります

進行期パーキンソン病の合併症

L-DOPAはドパミンの前駆物質で、治療薬として使用されますが、中枢に行く前にL-アミノ酸デカルボキシラーゼによりドパミンに変換されます(約70%)。それを防ぐため、カルビドパ、ベンゼラチドを併用します。また、L-DOPAは、一部COMTにより3-OMDに変換されてしまいます(約10%)。それを防ぐためCOMT阻害薬が使用されます。

ドパミンはそのあと、MAO, COMTなどの酵素で分解されてしまうため、それを防ぐためにCOMT,MAOを阻害する薬剤が使用されます。

 

パーキンソン病が進行すると、運動症状で目立ってくるのがWearing-off、ジスキネジアです。

Wearing-offは、パーキンソン病治療のファーストチョイスであるL-DOPAの効果がすぐに切れやすくなることにより、動けるon動けないoffが目立つようになってくる現象です。ジスキネジアはL-DOPAの効果が強すぎて不随意運動を起こす現象です。

  Wearing-offは発症から10年で50%、ジスキネジアは10年で30%、12年で50%という報告があります(Mov Disorder 2006)。L-DOPA 600mg投与すると4年で90%にWearing-off, ジスキネジアが出るという報告もあります。

ドパミンシナプスを介して伝達されますが、PDではシナプス前終末、シナプス後終末それぞれに問題を抱えます。

 シナプス前終末の問題としては、PDの進行期にはL-DOPAはセロトニン終末に取り込まれ、ドパミンに合成されるという報告があります。セロトニン終末は放出を調整するメカニズムがないため、ドパミンが大量に放出されるとジスキネジア、なくなるとWearing-offと極端な症状が出やすくなります。

 一方シナプス後終末の問題としては、直接路のD1,D3が間欠的に強い刺激により、進行期には感受性が亢進した状態となっており、ジスキネジアが起きやすい状態となっています。 ジスキネジアは、特に若年、L-DOPA投与量、ドパミン枯渇度(進行)により生じ易いといわれます。 

要はちょうどよい薬の閾値が狭くなり、閾値を超えるとジスキネジア、閾値を下回るとWearing-offとなります。

そこでドパミン濃度を一定にしたいということで、CDS (continuous dopaminergic stimulation)という概念があります。

ここで1日1回のドパミンアゴニストを投与することで、ドパミン濃度の底上げを行いoff時間が起こらないようにします。

また、MAO-B阻害薬やCOMT阻害薬は、Wearing-offに対して使用されます。

またドパミンアゴニストのロピニロールは1.5時間、イストラデフィリンは46分off時間を短縮するという報告もあります。