パーキンソン病 診断基準と治療 ガイドライン
パーキンソン病の診断基準は、国際パーキンソン病・運動障害疾患学会(MDS)の診断基準に準拠されています。
具体的には、パーキンソニズムが存在し、(1)絶対的除外基準に抵触しない、(2)少なくとも2つの支持的基準に合致する、(3)相対的除外基準に抵触しない場合に、パーキンソン病と診断することとなっています。
絶対的除外基準として
1 中等度以上の重症度にもかかわらず、高容量(>600mg)のL-DOPAによる症状改善が見られない
2 シナプス前性のドパミン系が機能画像検査により正常と評価される
3 パーキンソニズムをきたす可能性のある他疾患の可能性が高いと考えられる
支持的基準として
1 明白で劇的なドパミン補充療法に対する反応性がみられる
2 L-DOPA誘発性のジスキネジアがみられる
3 四肢の静止時振戦が診察上確認できる
4 以下の検査法が陽性
嗅覚喪失または年齢:性を考慮した上で明らかな嗅覚低下の存在
MIBG心筋シンチグラフィによる心筋交感神経系の脱神経所見
相対的除外基準として
1 日中又は夜間の吸気性喘息や頻繁に生じる深い吸気など、吸気性の呼吸障害がみられる
2 年1回を超える頻度で繰り返す発症3年以内の転倒
3 5年の罹患期間の中で以下のようなよく見られる非運動症状を認めない
自律神経障害:便秘、症状を伴う起立性低血圧
嗅覚障害
精神症状:うつ状態、幻覚、不安
今回、画像診断が診断基準に反映されていることが目を引きました。
1つが DAT(ドパミントランスポーター)です。
DATシンチグラフィーは、線条体にあるドパミン神経細胞終末のシナプス前機能を評価することができ、PDではDATの集積低下が認められます。このシンチグラフィーで正常画像が認められることが「絶対的除外基準」と位置付けられました。
もう1つがMIBG心筋シンチグラフィーです。
MIBG(3-metaiodobenzylguanidine)とは交感神経遮断薬であるグアニジンのアナログであり、交感神経終末でノルアドレナリンと同様の生理動態を持つ物質です。パーキンソン病で心臓のMIBG集積が低下することが特徴とされています。
MIBG心筋シンチグラフィーは、パーキンソン病以外の疾患と鑑別する際の特異度が80%以上の報告があり、「支持的基準」の1つとされています。
治療法については、改定前は運動合併症のリスクが低いドパミンアゴニストから開始することが推奨されていましたが、運動合併症のリスクの高い65歳未満の発症でなければL-DOPAから開始することが推奨されている。つまり患者のADLを重視した方向に変換されています。
一方早期で運動合併症のリスクの高い症例については、ドパミンアゴニストあるいはMAO-B阻害薬を選択することを推奨しています。MAO-B阻害薬ではセレギリンの単独投与が保険適応として認められています。また、アンフェタミン骨格を持たない為不眠症のリスクが少なく、1日1回投与のラサギリンメシル酸塩もあります。またセレギリンはMIBGシンチに影響を与えますが、ラサギリンはMIBGシンチに影響を与えないとされています。
ここでガーナstudyというものがあります。
ガーナstudy
ガーナ人、イタリア人それぞれL-DOPA投与開始時期が平均5.9年違う状態で、その後の運動合併症について調査したところ、差がなかったという報告がありました。
これによりL-DOPAを早期に投与しても運動合併症の予後は変わらないということが示唆されました。
運動合併症を生じた際のアルゴリズムについては、まずL-DOPAを3回投与していた場合、4~5回に回数を増やすか、ドパミンアゴニストを開始、増量します。効果が弱ければエンタカポン、イストラデフィリン、ゾニサミドなど併用を考慮します。さらにL-DOPA、ドパミンアゴニスト調整して、最終的には適応を考慮した上でデバイスを検討するとなっています。